2010年11月30日

今、学ばなければならないポイントと。 古くて新しい議論。

「18才からの資本論講座」もついに11回目です。残すはあと1回のみ。
今回の参加者は、16人でした。

「資本の蓄積過程の下」の部分ですが、「上」の復習も含めてお話ししたので、全体像を理解できたのではないかと思います。

いつものように、グループ討論に1時間以上使いました。
今回は古くて新しい質問である「資本家は、労使が協調して企業がもうかれば、労働者の状態もよくなるといいますが、その主張をどう思いますか」です。

P1020982.JPG


P1020987.JPG


個々の企業では、とりわけ零細企業の場合は、潰れてしまっては困るので企業は儲けなければなりません。
しかし、社会全体でみれば話しは変わってくるというところに、この問題のロジックがあるようです。ずばりと見抜いていますぴかぴか(新しい)


話しは、「資本主義的蓄積の一般法則」に戻りますが、今ここの部分の学習とそれにそう研究が待たれていると思います。今、資本論を読むならココだと思いますグッド(上向き矢印)

18才からの資本論らしく、思い切り簡略化したレジュメの関連部分はこうです。

「○資本主義的蓄積の一般的法則
@資本の蓄積過程とは、資本主義の搾取関係そのものが拡大再生産されていく過程です。資本の蓄積がすすめば、資本の規模が拡大して労働者の数が増えて、資本の搾取がひろがります。同時に、生産性が増大して資本の有機的構成が高まり、相対的過剰人口が累進的に形成され、それによって現役労働者の労働条件と賃金が圧迫され、資本の搾取が強まります。
この蓄積が加速度的にすすみ、資本の搾取が量的にも質的にも拡大・強化されるにつれて、必然的に、社会の一方の極には、少数の資本家階級の手に巨大な富が蓄積され、社会の他方の極には労働者階級の失業と貧困が広がります。

A資本主義的蓄積の一般的法則は、労働者階級の貧困化を引き起こしますが、それは、労働者階級の相対的貧困化と絶対的貧困化という形をとってあらわれます。
1.相対的貧困化とは、労働者階級の社会的地位が資本家階級の状態にくらべてわるくなることです。労働者階級があたらしくした価値(国民所得)のうち、労働者のうけとる価値(賃金)の割合が小さくなることでわかります。
2.絶対的貧困化とは、労働者階級の状態が自分の以前の状態より悪くなっていることで、労働日の長さ、賃金水準の下落、失業率の増大などなどによってしめされます」。


ここの貧困化の部分には、かなり議論があるらしく、理論の発展が求められているのではないかと思った1日でした。
「貧困の蓄積」と半失業・非正規労働 備忘録  
「なぜ資本主義は貧困を広げたか」(唐鎌直義・元専修大学教授)、「非正規労働は『自己責任』なのか ――「資本論」の産業予備軍論に立ち返り考える」(関野秀明・下関市立大学准教授)の備忘録(経済2010.11号)
【なぜ資本主義は貧困を広げたか】  唐鎌直義・元専修大学教授
はじめに
・マルクス「資本主義的蓄積の一般的法則」(「資本制生産の敵対的性格」の指摘)で「富の蓄積」は、対極に「貧困の蓄積」を必然的に生み出すと詳述――― 現在の日本、人口の再生産の衰退、限界集落、12年間で38万人の自殺、など指摘は、誰も否定できない。
→ 貧困の理解には、この資本主義の法則を基礎におくべき /この視点を失うと、貧困の原因は個々の貧困者の個別性と多様性の中に韜晦し、貧困の不可知論へと導かれる /貧困は必ず具体的な個人に発現 /だからと言って、政策対応が個々人へのケースワークで済まされてよいはずがない。
・敵の所在を明らかにし、貧困をなくす闘いの共通の土俵を作るためには「資本論」を「導きの糸」とするべき。

1. 貧困原因としての「半失業」
・ 働く人々を経済的困窮に陥らせる原因 /老齢、障害、疾病、離死別、失業といろいろあるが、もっとも判断が難しく、歴史的にも政策的対応に大きな振幅を見せてきたのが失業による貧困
→ なぜか?/ 失業は稼働能力をもつ人々の貧困だから。/現に働いている人は「意欲の低下」「怠惰」と理解しがち。/どんなに厳しい不況でも失業はすべての人に均等に発生はしない。失業と失業しない人に二分され、しかも常に失業は少数派 / 失業を「心がけの悪さ」「努力不足」に帰することは至極容易である。
→ 人の判断の最深部には、自由競争原理の是認、「自立・自助」原則という壮大なフィクションがある。/多くの貧困原因のなかで、失業は最も道徳と結びつけてとらえやすい貧困要因
→ わが国でも、失業者はごく少数の例外を除き、生活保護の救済対象からはずされている。
→ この克服には、「失業とは何かという根源的な問いかけが不可欠」である。

(1) カール・マルクスの「相対的過剰人口」論
・労働者階級の貧困の原因が「半失業」(今日の非正規雇用)にあることを見抜き、理論的に体系づけたのは「相対的過剰人口」論を提起したマルクスが最初といってよい。
@ 景気循環の不況局面では労働力の需要(求職)が供給(求人)を大きく下回る。すぐわかること
A マルクスは、好況局面(むしろ好況局面だからこそ)、生産合理化(機械化)の推進によって投下資本中の固定資本比率が上昇しつづけ、可変資本(賃金)比率が相対的に低下し続けることを指摘(資本の有機的構成の高度化)
B これによって資本蓄積欲求に都合よく吸収、反発される「相対的過剰人口」が「労働力のプール」として常にいかなる場合にも準備されている。/ それが資本主義的生産様式の1つの重要な存在条件
C 労働者は材料のように倉庫にプールできない。過剰とされる労働者は「半失業」の状態としてプールされる。

・ マルクスの「相対的過剰人口」の諸形態/ 流動的形態、潜在的形態、停滞的形態、恤救貧民
→ マルクス「奴隷が認められてない自由な国では、最も確実な勤勉な貧民が多いことである。かれらは陸海軍のためにけっして尽きることのない供給源である」(マンデヴィルの言葉)/昨今に日米に当てはまる。

◇ 好況期にも貧困は蓄積される。
・故江口英一氏  「停滞的形態」を最も重視し、貧困を「働く貧困者」の問題として広く把握し続けた。/高度成長期からバブル期まで日本資本主義が最も活況を呈した時代だから、資本蓄積と同時に貧困の蓄積も猛烈な進行があったと考え調査。/「不安定就業階層」は底辺層として全就業人口の3割強を構成と考え /マルクスの指摘どおり、失業の本質は「半失業」であると主張。

(2)チャールズ・ブースの「常用雇用化」論
・19世紀末、英国の世界市場単独支配が終わり、帝国主義の時代に突入/この時、英国は世紀末大不況に遭遇/この時期に、「独占」と呼ばれる寡占企業が成立、クラフトユニオンがゆきづまりを見せる一方で「新型組合」とよばれる一般労組が台頭、社会主義思想が勃興するなど騒然とした世相
→マルクスの命題に対し、資本主義の大胆な修正で貧困問題を乗り越えようとする試みが、社会主義運動の高揚に強い危機感を抱いた資本家階級に属する人々から提起された。
・ チャールズ・ブース(海運業者 1840-1914年)統計学を駆使して「ロンドン調査」を実施
→ 『社会階層』の概念を用い、一定の「職業と結びついた貧困層」の存在を証明したのが最大の特徴
/港湾労働者、煉瓦積工、馬車の などをレーバリング・プアの代表として見出した
→ 基準「収入が規則的にあり、質素な暮らしながらも、緊急時に他人から借金しなくても済む暮らし」/この基準以下の世帯の出現率は35%強にも達した。
・ ブースの分類 /標準生活E 貧困層D(収入は規則的だが低賃金)、C(間歇的収入)、B(不規則な収入)、A(臨時的労働者の最下層、浮浪者と半ば犯罪者)
→ CDの貧困原因は68%が「就労は規則的だが低賃金」「賃率は低くないが不規則」。ブースは「雇用に基づく貧困」と分類。/ 病気や大家族による貧困は「境遇に基づく貧困」19% /『個人の道徳的堕落』は全体の13%だけ
・ ブースは、最大の貧困原因が雇用問題であると発見 /「半失業」問題に着目。貧困は、雇用問題という「社会的原因」であると証明した
→ なぜ社会的原因か @資本家階級の圧倒的な繁栄の下で労働者の悲惨とも言うべき貧困が生じた A国家が何らかの対策を採るならば解決できる貧困を放置しているから。

・ ブースの処方箋 ・・・「不安定雇用労働者」を構成するB階級を、労働者階級全体の「死錘」と見なし、B階級を取り除くことで、CD階層をE階級まで浮上する。
→ B階級には高齢者や障害者が多く含まれ、公的扶助で生活を保障し、労働市場から引退させると「ひどく劣悪な条件でも、否応なく食べるために働かなければならない労働者」をなくし、労働者間競争圧力を緩和し、労働者の要求実現に優位に導く /マルクスが述べた「産業予備軍の死重」を取り除こうとした
・ ブースの「常用雇用化」/ さらに「不安定雇用」をなくすために正規労働者化を提唱し、公的な無料の職業紹介所を創設し、「雇用の質」をチェックし、不安定雇用を労働市場から除去する役割を担わした。
→この体系は、「ブースの市場論」「ブースの雇用理論」と呼ぶ
→ この考えは、「労働市場の組織化」理論として、ベヴァリッジらに受け継がれ、先進国の雇用政策、社会保障政策の基本的枠組みとなった。

◇ 「不安定雇用」――失業の本質
・ 日本は労働法制の緩和、非正規労働の増加と正規労働者の条件悪化により、大企業は巨額の利益を得た。/今の日本から貧困をなくすためには、労働者派遣法の禁止からスタートしなければならない
→ 失業問題を回避する貧困研究は、貧困問題の本質にたどり着けない。
・ ブースの政策提案 / 世界初の無拠出老齢年金(1908)、世界初の職業紹介所(1909)、世界初の失業保険(1911)等に結実 /この実現は、彼一人の力ではないが「不安定雇用」という「近代的貧困の本質」の発見をつうじ、貧困認識を一変させ社会保障制度の創設という新しい政策を提起した意義は評価されなければならない
→ ブースの研究は、今も「貧困の発見」「失業の発見」と賞賛/ 労働者階級にとって普遍的価値を有する。

2. 日本の社会保障の貧困除去機能は低い
・ 貧困原因として「半失業」とともに重視されるべきは、急速に低下する社会保障の貧困除去機能。
・ 「国民一人当たりの社会支出」の国際比較 (05年度、社会保障統計年鑑より)
スウェーデン1万7135ドル、アメリカ8585ドル、日本6873ドル
スウェーデンを100とし、ドイツ73、イギリス63、アメリカ50、日本40
・ 社会保障の貧困除去機能の国際比較
 社会支出のOECD基準による9分類のうち、「家族、積極的労働政策、失業、住宅、生活保護その他」の5分野を「貧困関連社会支出」と分類
スウェーデン4055ドル、イギリス2777ドル、ドイツ2294ドル、日本599ドル
スウェーデンを100とし、ドイツ57、イギリス68、アメリカ21、日本15(わずか!)
・公的扶助の水準比較
 アメリカ、スウェーデンが300ドル台以外は、ドイツ96ドル、イギリス91ドル、日本94ドルで遜色ないように見える
→ しかし、ドイツ、イギリスの公的扶助は、日本の生活保護の「生活扶助」部分にのみ特化したもの。住宅、教育、医療、介護など現物サービスで国民一般対象の普遍的施策、または低所得者対象の施策の組み合わせで、最低生活を保障している。
→ 日本は、8種類の扶助、現金給付のみ。/生活扶助と生業扶助に限定すると31ドルと1/3のレベル

終わりに
・ 我々はマルクスのいう「資本主義蓄積の一般的法則」が貫徹する社会で、日々労働と生活を送っている /資本主義のくびきから抜け出すことは難しいが、せめて国民の労働と生活の諸条件を整備して、不安のない社会を構築することが、国に課せられた最低限の責務
〜「政府の目的は支配者や民族の栄光ではなく、庶民の幸福である」(ベヴァリッジ)

★「失業する権利」
・労働者が完全に失業した状況というのは、失業の理念型であれって現実化ではない。/全く仕事に就いていない状況は、失業給付制度が創設されて初めて世に登場する。だから失業の基本形は常に半失業である /失業は決して悪い状況ではなく、悪い状況になるのは、ひとえに失業保険給付の貧しさにある /フランスの労働者は『失業する権利』を主張――「不適切な条件での就労を回避するために、失業保険、失業扶助を権利として保障すること」(メモ者/ 分厚い社会保障は、労働力の安売りを防止する)


posted by 井上 at 10:55| Comment(0) | 資本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: