2011年04月27日

パソコンで読めるようになりました!

昨日の記事が、読めるようになったみたいです。
是非ご覧くださいグッド(上向き矢印)

http://spa.fusosha.co.jp/feature/number00014591.php
posted by 井上 at 22:04| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月25日

心的外傷と回復

PTSDがまたも話題となっています。
深刻な被害をもたらした、地震のためです。
約7年前に読んで、6時間ぐらいの講義(PTSDに限らずに)をしたことを思い出します。
PTSDについては、今だ議論があります。
今回、「心的外傷と回復」を読みなおして、私達活動家と自覚的な人々はこの問題に立ち向かわなければならないとの思いを新たにしているところです。

心的外傷と回復

確かに、専門書の領域の本であると思います。しかし、それを超えて幅広く読まれているのが現状だと思います。

私は、この本のどこかを抜粋する訳ではなく、この本を通じながらなぜ私達の課題と言えるのかを考えてみたいと思います。

そもそもPTSDの言葉は、このブログで出てくる、米国精神医学会の診断と分類の基準によって、1980年に生まれました。いわゆるDSМVによってです。

PTSDは、人間と人間の関係によって、生みだされてくる問題なのです。
しかしながら、そこに病気だとラベルを張り、専門家にだけ任せてしまう傾向があることに、少なくない抵抗を感じるのです。
人間と人間の関係に積極的にアプローチして、人間そのものを変えていく営みこそが、私達の活動であると思っているからです。
ですので、現代を生きる活動家には是非読んで頂きたいと私は考えています。

ただ、注意しなければならないことは、PTSDと隣り合わせの気分障害(うつ病)が少なからずあるからです。とりわけ愛する人との死別などの場合はそうです。専門家の治療と回りの理解が不可欠となります。

さらに、日本社会の文化的要素という難しさがあります。
「孤立」させられている、傷ついた人に力をあたえることが必要なのに、その反対に扱う場合が少なくないからです。
いずれにせよ、言葉の独り歩きは怖いものです。

他の活動家の方とも、ゆっくりと時間をかけて議論をしてみたい問題です。

posted by 井上 at 16:36| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月25日

鋭い問題提起だと受け止めました

N久さんに紹介されて、さっそく購入しました。

季論21 第11号 [単行本] / 季論21編集委員会 (刊)

「マルクスブームが生んだもの、生んでいないもの」という記事に注目させられました。

確かに、「体系をわかりやすく解説しようとした各種の解説本」は、私もたくさん読みました。
とりわけ、筆者もあげているように、「いまこそ資本論」は驚くべきわかりやすさに舌を巻きます。

「体系ではなく、自分とマルクスのかかわりを明らかにするという課題」

という問題提起において、私達の「18才からの資本論講座」が成功した先進事例であることに、自信と確信を深めることが出来ました。
「わかりやすく解説するにとどまらずに、自分とのかかわりで資本論の書いてある意味を模造紙に書き、自分の言葉で説明」するからです。
自らが、資本論の講師の第一線で活躍されている、丹下先生や上滝先生もここの部分に「絶賛の拍手をしてくれたのです」。

注‥私は、自分の頭で考えることもしなくはないですが、他人の頭を借りることが得意です(笑)

「生き方や社会のあり方の根源を問う相談者としてのマルクス」

という角度から、私たちが様々な形態を駆使しながら、自らの力で資本論を当たり前の教養として広げていく努力が求められているのだなと認識を新たにした次第でするんるん

(体調の問題もあり)全力投球というわけにはいきませんが、じっくりと先進的な取り組みにチャレンジしていきたいと思う論文でした。


追記。「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のマルクス版の出版が待たれています。
この仕事は、若手の学習運動家の仕事だと思われます。
となると、書き手はおのずと限られてくるのではないかと。是非実現したらいいなあと思ったことでしたぴかぴか(新しい)


posted by 井上 at 13:02| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月20日

カールマルクス レーニン著

月末に、とあるテキストについての議論があるため、10数年ぶりに読み返してみました。
科学的社会主義の講義(6時間程度)を受けた経験からいうと、「カールマルクス」で2回、「反デューリング論」で2回あります。

私の若いころには「カールマルクス」を読んだら、どこまで自分が理論がわかっているのか試せるとよく言われたものです。

今回読み返してみて、資本論の2巻3巻の部分で少しわからない部分がありましたたらーっ(汗)
当然、理論として発展させないといけない部分もチラホラあります。

しかし、哲学といい経済学といい、これだけコンパクトにわかりやすく解説してある文献は他にはないですね。しかも、哲学の部分の導入にスムーズさには舌をまきます。
文庫本でわずか50ページたらずです。

概念をまず押えて、それを説明するというのは、実はかなり難しいのです。
しかも、主観で中身をとばさなければならないことが出てきます。

今回、読んでみて科学的社会主義の理論の普及に新しい光をさせるような、議論を月末にはしたいと思ったところです。
残念ながら、文庫本は現在品切れのようです。

井上淳一
posted by 井上 at 14:31| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月22日

NHK「無縁社会プロジェクト」取材班『無縁社会 “無縁死”三万二千人の衝撃』

今年1月、NHKスペシャルで同名の番組が放送され、大きな反響を呼びました。本書は、同番組の取材班が中心となって、その内容を充実させ単行本化したものです。

 身元不明の自殺、行き倒れ、餓死、凍死などの「無縁死」が年間3万2千人にも上っており、実に年間の自殺者数とほぼ同数という衝撃的な調査結果が紹介されています。「無縁社会」はNHK取材班がつくりだした言葉ですが、本書では、まさに誰とも縁のない、関係がないと思っている人、「無縁死」していった人達の人生を丹念に追っています。

何といっても、心に残ったのは、「・・・でも取材で次第に身元がわかってくると、ほとんどが普通の人だったと気づかされるんです」(2ページ)、という言葉です。第1章「追跡『行旅死亡人』」で、秋田県出身で、東京で無縁死(行政用語では「行旅死亡人」)してしまった人の人生を追跡する中で、地方出身者である取材チームのメンバーが、他人事とは思えないと、自分の問題として受け止めていることが印象的です。そして、取材班が追跡した結果、亡くなってしまった当人が、晩年までなぜ働いていたのかという理由を突き止めるくだりは、非常にやるせない気持ちになります。

人と人とのつながりが薄くなっている理由はさまざまにあり、簡単には解決できそうにありません。若い世代にも、「無縁死」に対する共感が広まっているという、驚くべき報告もあります。しかし、「『もうこの流れは止められない』と問題提起だけであきらめるのではなく、何らかの”可能性”を番組制作を通じて模索していきたいと思う」(268ページ)、という取材班の姿勢から多くのものを学ばなければならない、という思いをもちました。本書は、番組をご覧になった方でも、今一度手にとってほしい本です。

霜田博史(県学習協副会長 高知大学准教授)

無縁社会 [単行本] / NHK「無縁社会プロジェクト」取材班 (著); 文藝春秋 (刊)
posted by 井上 at 12:33| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月06日

絵本について考えた2日間です

土曜日は、おちびちゃんの通う保育園にて、コッ○さんという絵本屋さんをお招きしてのお話しです。
最近、町の本屋さんはどんどんなくなっていっていますが、ここの本屋さんは急成長グッド(上向き矢印)

知らない人はすくないのでは? という感じです。

P1020730.JPG

「昔から読み継がれている本には不変性があります。その良さは現在でも変わっていません。そうした本を是非読んであげてください」
「また、子どもたちは2010年を生きている訳で、現在の絵本の中からも選んでよんであげてください」
基本的な本の選び方は、まず「お父さん、お母さんの好きな本を選んで、その本を一緒によんであげるといいですよ」とのことです。

絵本選びは、だいたい「お父さん、お母さんの好きな本」ということを良く聞きます。

日曜日は、高知県母親大会です。分科会に行くと絵本の話しをしていました。
(カメラは持っていっていたにもかかわらず、電池を自宅に忘れてきました)バッド(下向き矢印)

今度は、保育士さんから「良い本と悪い本」の見分け方という話しを伺いました。
なんでも、子どもは字は読めません。なので、言葉でしゃべっていることを絵本の絵の中で「一生懸命さがす」そうです。
まったく同じストーリーの2冊の本を比べてみました。なるほどっ、子どものイメージが膨らむ絵、できだけ豊かに描かれている絵の本の方がいいみたいですね。

この話しは、初めて聞いたので参考になります。

ちなみにわが家は、絵本が増殖して基本買わないようにしています。図書館で20冊借りてきて、また新しい本を借りるという繰り返しです。
現在でもこのありさまです(汗

P1020731.JPG

こちらは、定番の本置き場ですね。

枕元に増殖した本たちです。

P1020732.JPG

自宅にてさっそく読んでみます。定番はこちら。


パパ、お月さまとって!

パパ、お月さまとって!

  • 作者: エリック カール
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1986/12
  • メディア: ハードカバー




最近のはこれかな?


わにわにのごちそう (幼児絵本シリーズ)

わにわにのごちそう (幼児絵本シリーズ)

  • 作者: 小風 さち
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2007/02/07
  • メディア: 大型本




これは、シリーズになっています。

いやー。絵本はいいですねグッド(上向き矢印)
posted by 井上 at 10:29| Comment(4) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月12日

微妙に違うんですよね


はらぺこあおむし (ビッグブック)

はらぺこあおむし (ビッグブック)

  • 作者: エリック カール
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1994/05
  • メディア: 大型本



土曜日は、保育園の夕涼み会でした。つゆどきなのに晴れでしたグッド(上向き矢印)

最後の影絵は、「はらぺこあおむし」の登場です。
CDの音楽にあわせて、あおむしがパクパクと食べますぴかぴか(新しい)
職員の先生は3回も練習したようですが、当日はドタバタでした。
(私は、PTAの役員なので、職員室からドタバタを直接見てて大笑いしていました。写真なし)

このCDは、長女が小さい頃にダビングして、ずうっと聞いていたので覚えています。
しかし、普通のサイズの絵本とは訳が違うんですよね。
CDの方がテンポがいいので、そちらで読んでしまいます。
こんど、このCD付きの訳を見てみたいと思った次第です。

P1020764.JPG
よさこい踊りを踊る、おちびちゃん。
最近は、よさこいソーランが有名ですが、高知のがオリジナルで全国に広がっていきました。

P1020743.JPG
うちわをもらっているところ。

P1020750.JPG
ピントがずれるほど、のりまくっている園長先生です(笑)

今年も、無事に終了してよかったです。
posted by 井上 at 13:35| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月08日

書評 〈中東〉の考え方


<中東>の考え方 (講談社現代新書)

<中東>の考え方 (講談社現代新書)

  • 作者: 酒井 啓子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/05/19
  • メディア: 新書


 アメリカで同時多発テロ事件が起きてから、イラク戦争に至る経緯の中で、日本でも自衛隊派遣の是非が問われたことからいわゆる「中東」への注目が高まりました。しかし、「中東」とは遠いところにあって「よくわからないところ」。それぞれ違う国をなぜ「中東」としてくくらなければならないのか?ともかく、著者の提起は、「中東が「わかりにくい」と思われてしまう原因は、中東で生きる人々を主人公として考えないことにある」(9-10ページ)ということです。そうした観点から、本書は中東全体を見渡す入門書という位置づけで書かれています。

 本書の特徴のひとつは国際政治史の連関の中で「中東」を捉えているところであり、中東が決して世界の中で特殊な地域ということではなく、世界情勢と作用と反作用を繰り返しながら現在に至る過程を丁寧に明らかにしてくれます。とりわけ印象深いのは、「民主化が進むとイスラーム主義が強まる」という中東諸国におけるイスラーム主義の台頭に関する考察です(引用は196-200ページから、一部省略)。

-----------------------------------------

 イスラーム主義が人々に支持されたのは、それが、民族主義運動がなしえなかった「抑圧からの開放」、特に外国の支配からの脱却を謳うからである。そして、「外国に抑圧され続けている」と感じる人々が、中東各地に多く存在するからである。

・・・

 上に述べたように、ヒズブッラーにせよ、ハマースにせよ、レバノンやパレスチナで堅固な支持基盤を得ることができたのは、むしろ民衆への慈善活動を通じて、戦禍に喘ぐ地元社会に貢献したからである。彼らは、占領地で十分な社会サービスを受けられない住民を対象に、地道な社会活動をしてきた。そのことが、住民に評価された。

 ここに、「中東で民主化が進むとイスラーム主義勢力が票を伸ばす」という現象が生まれる。・・・

 外国の手で導入された民主的な選挙によってイスラーム主義勢力が政治舞台に登場したのは、パレスチナだけではない。イラク戦争後のイラクでは、2005年、米軍の駐留が続く中で実施された国会選挙で、シーア派系のイスラーム主義政党が二度にわたって圧勝した。彼らもまた、国家が崩壊した瓦礫のなかで、宗教界の社会的影響力を通じて人心をまとめ上げることに成功したのである。

-----------------------------------------

 イスラーム主義者といっても多種多様で、全てが過激派というわけではなく、現代の変化においてイスラーム主義も変化を遂げています。中東でイスラーム主義政党が支持を得るのは、既存の秩序では十分な社会統合が行なわれていないことを示しています。中東におけるイスラーム主義のあり方は、民主主義の発展のあり方はどのようにあるべきか、さまざまなことを教えてくれるような気がしました。


霜田博史

posted by 井上 at 10:58| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月20日

熟読すると、素晴らしい展開であると分かるなあ

ただいま、資本論第3章「貨幣または商品流通」の部分の講義案の準備中です。

それにしても、原書で50ページもある部分です。
それが゛なんとこの本では4ページに凝縮されています(汗
しかも、ほぼすべての説明がなされているではありませんか!


しかし、これだけでは講義に短すぎ‥  原書は長すぎ‥
誰か、私にお助けあれあせあせ(飛び散る汗)


マルクス自身の手による資本論入門

マルクス自身の手による資本論入門

  • 作者: ヨハン モスト
  • 出版社/メーカー: 大月書店
  • 発売日: 2009/10
  • メディア: 単行本




















現在、私の手によって枝葉を書き加えているのですが、はたしてそれが正しい認識なのかどうなのかは、講師団会議でたたかれます。

大学で経済学を専攻するでもなく、高卒の私には絶好の学習チャンスでもありますね。

脳みそが、つかれたら他の訳でも眺めています。


フランス語版資本論 下巻

フランス語版資本論 下巻

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 法政大学出版局
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: −
























ヨハン・モストさん。この本が出るまで名前さえ知りませんでした。
お宝発見の気分ですね。
posted by 井上 at 12:06| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月14日

益川敏英『学問、楽しくなくちゃ』新日本出版社2009年

本書は、もうすでに紹介するまでもなく有名なノーベル物理学賞受賞者、益川敏英さんの学問に関する講演・論文集です。酷苦勉励して学問をしてきたわけではなく、労働組合活動や平和活動など、その時点で面白いこと、やらねばならないことを一つ一つ片付けてきただけで、安易な生き方をしてきただけだというお話は、益川節とでもいうんでしょうか。なかなか真似できません。

本書では、学ぶことは喜びであるということが様々なエピソードとともに語られます。とりわけ、様々なことを真剣に議論できる友人や人間関係を持つことが大事であるということが重要視されているように感じます。また同書の特徴は、学ぶことの喜びだけではなく、「法則の認識」を持つことの必要性や、大学の役割、科学的精神の重要性と科学者の社会的責任についても説いているところではないかと思いました。「法則の認識」の必要性について、大学の役割とともに様々なエピソードとともに語られますが、例えば次のようなお話です。『昆虫記』で有名なファーブルが伝えている話として紹介される、パスツールがフランスで流行ったカイコの伝染病を撲滅したというエピソードです(引用は145〜146ページ)。



---------------------------------

 ファーブルが住むフランス南部では養蚕業が盛んでした。あるとき、カイコがウイルス性のタバコモザイク病にかかり、養蚕業が壊滅的な危機におちいる事態が発生しました。当時の科学・技術の水準は、せいぜい顕微鏡をのぞくぐらいしかできず、それでは病原体を発見することはできませんでした。当時、フランスの主要輸出産業は絹織物でしたから、カイコの病気はフランス国家にとっても打撃になりかねない。そこでフランス政府は、当時の細菌学の権威であったパスツールを対策責任者としてアヴィニョン地方に派遣します。ファーブルは昆虫の生態などについては詳しいが、その自分ですらカイコの病気を治すにはどうしたらよいのか思いもつかないのに、パスツールという人物は、どれほど昆虫のことを知っているのだろうか、と興味津々ながめていたそうです。

 ところが、やってきたパスツールは、まず繭を手にして耳元でふり、「あっ、音がする」というほどカイコについては何も知らない素人でした。いったい、それでどうして病気が治せるのか。カイコの病気はウイルス性の病気でした。だから、当時の技術水準では病原体を同定することは不可能でした。しかし、パスツールは、免疫学を確立した微生物学の権威です。狂犬病のワクチンをつくり、炭疽病のメカニズムの解明などをおこなっていましたから、病気というものがどのように伝染していくのかというプロセスの基本は熟知していました。ウイルスのような病原体の伝染について、原理的なことを十分に理解していたのです。パスツールは、免疫学的な手を次つぎうって、三カ月ほどでカイコの病気を撲滅して帰っていったと、ファーブルは本のなかで紹介しています。

 つまり、ファーブルは昆虫のことはよく知っていたが、その知識は表面的なことにすぎなかった。一方、パスツールは昆虫のことは何も知らなかったが、病気のメカニズムについては基本的なことを知っていた。パスツールのほうが、カイコの病気という側面ではより基本的な法則を認識していたわけです。より基本的な法則を認識していれば、さまざまな応用が可能だという一つの事例です。

---------------------------------



 本書では別の事例として真空管とトランジスタのことなどを挙げ、大学では基本的な法則の認識をする訓練をすべきである、というようなことが指摘されています。学問の本質とはなんだろうか、ということについて考えさせられる事例のように思います。その他にも多くのことを示唆してくれる面白い本だと思いました。

霜田博史



学問、楽しくなくちゃ

学問、楽しくなくちゃ

  • 作者: 益川 敏英
  • 出版社/メーカー: 新日本出版社
  • 発売日: 2009/10
  • メディア: 単行本



posted by 井上 at 13:42| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月07日

吉見俊哉、テッサ・モーリス・スズキ『天皇とアメリカ』集英社新書2010年

 本書は、天皇とアメリカをめぐる様々なことを、明治以降の歴史を振り返りながら考察を進めていく対談集です。日本では天皇制に係わることがよく話題に上りますが、第二次大戦までの戦争責任の問題から、天皇家をめぐる家族のあり方がワイドショーなどに頻繁に取り上げられるなど、依然として幅広く強く関心を持たれるテーマです。本書は非常に幅広いテーマを扱っているために話の筋を追っていくのがやや大変だったりしますが、対談集なので文章自体は非常に分かりやすく書かれています。例えば、今上天皇が実はあまり右翼に支持されておらず、その理由として皇室外交などを通じてコスモポリタン化と近隣アジア諸国との友好化を進めていることがあげられるが、一方で活動のグローバル化を進めている大企業を中心とした経済界には新しい皇室像が支持されているといった、興味深い分析が多く見られます。

 本書は天皇とアメリカ、というテーマを扱っているものですが、とりわけ私が興味を持ったのは、石原慎太郎氏などに代表されるナショナリズムの言説の分析です。三島由紀夫氏とは違うナショナリズムの担い手の代表として、石原氏に対して次のような分析を行なっています(引用は156〜157ページ)。



------------------------------------

テッサ それにしても石原に選挙で投票した人たちは、彼にいったい何を期待しているのか、そこがわかりません。彼の政策がいいからという理由で支持しているとは、とても思えないのですが。外形標準課税にしろ、新銀行東京にしろ、失敗ばかりしているはずなのに。

吉見 彼に一貫しているのは、ある種の反知性主義ではないですか。知性的なものに対する嫌悪。都立大つぶしもそうだと思いますが、やっぱり知識人つぶし。でも、それが今の日本の風潮には合っているということでしょう。権威あるものをつぶしていくことの快感、知性への大衆的ルサンチマンみたいなものが、今の日本社会を動かしている。

・・・(中略)

吉見 ・・・結局、知的権威や伝統的な権威をつぶしていくことで、大衆の歓呼を勝ち取る。そしてそれによって権力を構築するという。屈折していますね。金持ちに味方の組織が、大衆とともに権威をたたくという不思議な構図がはびこっています。反権威主義の顔をしたえげつない権威主義。これはこのところ、本当に大きな流れになっていますね。

テッサ ブッシュ前大統領もそうでした。つまり一種の保守的ラディカリズムです。基本的には体制を守るためなのですが、別の想像の体制をつくって、それに対して闘う姿勢をとります。たとえば日本の自立を脅かしているのは、アメリカではなくて北朝鮮なんだとか、日本の社会を悪くしているのは自民党や民主党ではなくて、東大の学者であったり、東大の権威主義であったり、東大卒のエリート官僚である、といった具合に。

------------------------------------



 「反知性主義」は、現代のナショナリズムを読み解く上でのキーワードかと思いました。近年の構造改革の対象となる官僚批判などは、その際たるものかと思われます。現代日本では格差・貧困が徐々に社会的に認知されるようになってきていることで、「反知性主義」に基づく枠組みにはめられてしまう条件が作られてきているようです。「反知性主義」を乗り越えるために、想像力の幅を狭めない努力が必要とされているように感じます。

霜田博史


天皇とアメリカ (集英社新書 532C)

天皇とアメリカ (集英社新書 532C)

  • 作者: 吉見 俊哉
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/02/17
  • メディア: 新書




posted by 井上 at 13:05| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月31日

風間直樹『融解連鎖』東洋経済新報社2010年

著者は、前作『雇用融解』以来、日本の労働現場の報告を続けているジャーナリストです。前作では某人材派遣会社社長に対するインタビューの中で、「派遣労働者は自ら選んだ道なのだから」「労働基準法は撤廃した方がよい」といった趣旨の発言を引き出すなど、労働の規制緩和にみる資本の論理のすごさを提示していました。本作では、その後の展開をフォローし、労働の規制緩和が雇用の「融解」を招いている上に、この「融解」現象が日本全体に広まってきているという形で強く警鐘を鳴らしています。
 「融解」が連鎖している分野として、「ゼロゼロ物件」などに代表される居住問題、医療介護の労働条件と地域格差、「官製ワーキングプア」といわれる公共部門の非正規雇用・民間委託などを取り上げています。それぞれ非常に課題が多く、日本の労働市場が変容してきていることから連鎖的に生じている問題であることが理解されます。
 しかし労働や貧困をめぐる問題は依然として社会全体の問題としてとらえられているかといえばそうでもなく、代表的な発言としてある大学教授の発言が取り上げられています(引用は274ページより)。

----------------------------
 別の大学教授は、学生や若手ビジネスパーソンを対象としたセミナーで断言した。
 「昨今盛んに報道される『ワーキングプア』なんて、あれはウソ。学生たちには報道なんかより、自分の周囲で考えろ、誰もいないだろう、だから大した問題ではないんだと指導している」
 ちなみにこの教授が当時所属していたのは、超名門私大である。
----------------------------

 耳を疑うような発言として取り上げられていますが、現状認識をめぐるズレはどこから生じるのか。このズレを埋めるには、ひたすら当事者の声と現状を可視化していく努力が必要なのでしょう。こうした努力が必要ない社会になればよいのですが。現状は厳しいことを改めて教えてくれる本だと思いました。

霜田博史


融解連鎖

融解連鎖

  • 作者: 風間 直樹
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2010/02/19
  • メディア: 単行本







posted by 井上 at 12:52| Comment(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする